プロバイオティクス 微生物との共存
プロバイオティクス
最近、ヨーグルトで「プロバイオティクス」と書いてあるものをよく見かけます。
ここでのプロバイオティクス(Probiotics)は、例えば乳酸菌などの
「適切な量を摂取したときに、宿主の健康状態に有益に働く、生きた微生物」を指すそうです。
細菌感染などを起こした際、病院では、抗生物質(アンチバイオティクス)がよく用いられますが
これは anti(against) + biotics(生物)で、ヒトにとって病原体となり得る微生物などを
死滅させたり、育成を阻止するものです。
それに対して プロ(pro (for))+バイオティクス は、微生物との共生によって
微生物にも宿主(ヒト)にも双方に有益となるというものですね。
マイクロバイオーム
そもそも地球の歴史では、人類が誕生するずっと前から真菌や細菌などの微生物は生息していました。
人類が地球上に誕生したのは600万~700万年前、
細菌は40億年前、真菌(カビ等)が10億年前と言われています。
そして私たちの身体にも、細胞の数と同じくらいの、何十兆という数の細菌などの微生物が
生息しているのです。
この身体のなかの微生物の生態系をマイクロバイオーム(微生物叢)と呼びます。
私たちの身体が元気でエネルギーに満ちている時には、これらの無数の微生物は
身体に害になるどころか、健康の為になる様々な役割を果たしてくれているのです。
例えば腸では消化吸収を助けてくれたり、免疫力のバランスを調整してくれます。
これらのマイクロバイオームは肌表面や口、鼻の粘膜などにも存在します。
肌表面ではこのマイクロバイオームのお陰で弱酸性の皮脂膜が形成され、病原菌の増殖や肌内部への侵入を防いでくれる肌のバリア機能が保たれているのです。
多剤耐性菌
しかし、一度このマイクロバイオームのバランスが崩れると様々なネガティブな状況が起きます。
それは、病気や加齢により免疫力が落ちることが原因となることもあります。
また、大量の抗菌剤を頻繁に使用することによって、このバランスが崩れます。
なぜなら、抗菌剤は、身体中に存在する何十兆という数の微生物、全部を死滅させることはできず、
ある種の細菌を殺すことはできても、それよりもっと強い菌は生き残り、
弱い菌が居なくなることで今度は人にとって有害となり得る
強い菌だけが増殖してしまうからです。
また、抗菌剤の乱用により多剤耐性菌が出現しました。
例えば、ブドウ球菌は通常自然界に広く分布しており、ヒトの鼻腔、皮膚、腸管などに常在菌として存在しています。
しかし抗生物質の大量使用により、抗生物質が効かない、薬剤に対して耐性を持つ菌、
MRSA=methicillin‐resistant Staphylococcus aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が生まれました。
MRSA菌にはメチシリンなどの抗生物質が効かず、院内感染の原因菌として重要視されています。
今、コロナウイルス対策が切実な問題ですが、マイクロバイオームのバランスを崩さないこと、
そのために皮膚への大量の抗菌剤を使うことは望ましくないと思います。(そもそもウィルスに抗菌剤は効かない)
基本はしっかりした手洗い、うがい、そして外出時には、直接の飛沫を避け、また粘膜の乾燥を防ぐための
マスク着用で十分だと思います。
そして何より十分な睡眠をとり、リラックスした時間を持ちましょう。
バランスの良い食事を摂り、自分自身のエネルギーをしっかりと保ちましょう。
どうぞ皆様、お元気でいてください。